「マクドナルド」というハンバーガーチェーン店をご存知だろうか?黄色い「M」のマークでお馴染みのあのお店である。現在日本での総店舗数は3800店にのぼり、本家本元アメリカの総店舗数はなんと30000店近くにも及んでいるのだ。まさに名実ともに世界一のハンバーガーショップである。油っこくジューシーな肉を間に挟んだハンバーガー、カリカリに揚げたポテト、そしてダイエットコーク。これぞ「ザ・アメリカ」。アメリカを身近に感じる事のできるメニューと言える。

アメリカでの2ヶ月間の滞在でこの「マクドナルド」には本当によくお世話になった。朝・昼・晩の3食全てとまではいかないものの、朝・昼であったり、昼・晩であったりと、彼らはかなりのフル稼働を見せてくれた。確かに値段が安いというのもあるのだが、マクドナルドの魅力は決してそれだけではない。初めて訪れる小さな街では、はっきり言って何がどこにあるのかも分からない。そんな状態で良くわからないまま、よく分からない店に飛び込んでいくのは結構な勇気がいるのだ。

そんな中ここ「マクドナルド」はどこへ行っても同じ値段・同じ味・同じサービスを提供してくれ、いつも我々の事を気持ちよく出迎えてくれるのだ。転々と街を移動していく旅行者にとってこれは本当にありがたい。アジアやヨーロッパ等の海外旅行先で意識して「マクドナルド」へ行ったという方は案外多いのではないだろうか。決して数えたわけではないのだが、トータルでみると恐らく1日に1回のペースで足を運んでいるであろう。偶然に3〜4日も行かないでいると、無意識の内に行こうと思ってしまう。これはもはやある種の中毒なのかもしれない…。そして2ヶ月もの間通い続けてもいると、マクドナルドにおいてさえ日本とアメリカの文化の違いをひしひしと肌で感じる事が出来るようになってくる。

ある街で朝マックをしていた時、偶然隣に座っていたアメリカ人男性と話す機会があった。
ア 「マックは好きかい?」
野 「はい好きですよ。よく来ます」
ア 「そうか。実は僕のワイフは日本人なんだ。だから豆腐・納豆なんでも好きなんだ」
野 「そうですか」 
ア 「日本食はヘルシーだし世界一だね!」
野 「僕もそう思います」
ア 「逆にアメリカの食事は最低だよ。油っこいし、体に悪いからね」
野 「そうですね」
ア 「特にマックなんか最悪だよ。絶対に食べない方がいいよ」
野 「・・・」
40歳そこそこのアメリカ人男性は、奥さんが日本人で毎日ヘルシーな日本食を食べているという。そしてマックは最低だと言い放ちながらも自分は横で朝マックを美味しそうに食べているのだ。マクドナルドの周りには他のお店もたくさんあるのだが。なんなんだか。

とある街では、注文の為にレジへ赴くと明らかに70歳を超えていると思われるお婆ちゃんが1人でレジを切り盛りしていた事もあった。初めて見るその光景にはさすがに2人とも度肝を抜かれてしまった。冷静になって考えてみるのだがいまいち状況がよく掴めない。70歳のおばあちゃんがレジでアルバイト?まさか。その手馴れた手つきはもう長い間ここでレジを打っていそうな風貌だ。ひょっとすると昔ここで働いていたおばあちゃんがボランティアとして今また働いているのか。いや、ボランティアできている人に大切なお店の売上金を触らせるはずはない。いや、待てよ。ひょっとしてお店の店長が経費削減の一環として本部には内緒で自分のお母さんを連れてきているのか。いや、本部にばれると店長は確実にクビだな。結局よく分からなかったが、日本では一度も目にした事が無い光景である。なんなんだか。

またとある街で夕食時にマクドナルドを訪れた時、これまたはじめて見る光景に遭遇する事ができた。40歳前後のお父さんお母さんに10歳前後の子供が2人。どこにでもいる様な典型的なアメリカの4人家族である。そして時計は既に19時を少しまわっている。彼らはそれがさも当たり前かの様に普通にマクドナルドでディナーを食べていたのだ。さすがにこれには少しばかりのカルチャーショックを受けてしまった。日本とアメリカで店舗数の差こそあれ、日本でも既にマクドナルドはかなり深いところまで浸透しているとは思うのだが、果たして日本でこの様な光景を目にする事ができるかどうかは甚だ疑問である。

そして翌日またしても追い討ちをかける様にカルチャーショックを受ける事となった。その日は軽めの朝食をとりモーテルを出発したものの、やはり空腹には耐えられず近くにあったマクドナルドへと足を運んだ。時刻は午前10時30分頃である。すると丸いテーブルを囲むようにして、70歳はとうに超えているであろうおじいちゃん、そしておばあちゃん達が6人程集まり、朝マックをしながら楽しそうに談笑しているではないか。マクドナルドとおじいちゃん。一見すると不釣合いなこの光景に、一瞬入るお店を間違えたのかとお店の看板を確認し直した程である。おじいちゃんおばあちゃん達の振る舞いを見ていると、初めてマクドナルドに来たとは思えない。かなり手馴れた手つきでなんでもこなしているその様は、かなりの常連さんである事を伺わせるに充分すぎる程だった。その後他の街でも何度も同じ様な光景を目にする事となった。決して偶然の出来事ではないのだ。

アメリカ人におけるマクドナルドの位置付けは、決してイチ日本人には図る事のできない程奥深いものなのだろう。老若男女全てのアメリカ人がマクドナルドを心から楽しんでいるとさえ思えるのだ。「マクドナルド」に見るアメリカ人と日本人の文化の相違。このいくつかの出来事こそが、まさにそれを象徴していると言っても決して過言ではないだろう。いつの日か日本のマクドナルドでおじいちゃん・おばあちゃん達が楽しそうに集う光景を見る日は来るのであろうか。